※ネタバレだらけだよ!
難しい!大前提が架空のお話で「もしも…」の作品だからあれこれと考えながら観て、観劇後も沢山考えを巡らせて。答えを一つにまとめるのが難しいから感想が流動的になっちゃう。
けど観た後は何か爽快感というか成し遂げた感というか、ストーリー的に一区切りついたから次に進める感覚があった。
観た後の一番の感想というか考察は、全部(ラスト以外)2番の思い出なのかな?それともこの施設を作った人もしくは所有してる人(そもそも人なのか分かんないけれど)の思い出なのかな?ってこと。その人が選んだ思い出がこの舞台で再現されてるのかな?って。でもそれにしては「一つの思い出」って扱っていいのかな?ってくらいに長い期間だけれど。
そして何で靴なんだろう?って思った。
それを回収するのも何でだろう?回収した後はどうするんだろう?っても思った。
あの急に物がボトっと落ちる感じ怖いよね。あの施設に来た人はみんな自ら命を絶ったとか?でもそしたらベアトリスにだけあの2番からの指摘が入るのもおかしいかってなるし。
施設から去った後に靴が落ちるってことは、要らなくなるからなのかな?幸せとともに飛ぶから?
とても印象的だったオバフェミ。
あの施設にいる間は病気ではない自分でいられて、思い出を選んじゃうと病気の自分と永遠をともにする。
確かに生きている間に、自分の記憶の中に幸せな思い出が一つもないと逆に永遠の苦しみになっちゃうのか。
でも2番が選んだあのラストによってオバフェミみたいな人も救われるんじゃないのかな?もちろん2番は特例だったけれども、あの施設での経験も思い出として持っていけるのならそこに希望もあるのかなって。
ところでガイド以外も残った人なのかな?って考えてたんだけど、どうなんですかね?ガイド以外のスタッフも思い出を選ばなかった人たちなのかな?じゃあどこでガイドとスタッフを分けるんだろう?やっぱり違う?
そもそもこの施設は何のためにあるの?そして誰が元締めなの?他にも支店みたいなのがあるの?
月も星も偽物、ずっと秋ってことは作られた時空間なってことなのかな。ってなると一番最初の誰かの思い出の中の世界っていうのに繋がりそうだけれど、そうなると何で星の位置がでたらめなんだろう?思い出の所有者が星まで記憶してなかったから?
選べなかった人が選ばせる側にくるのは何で?そういう地獄?幸せとともに向こうに行かなかった人たちが行く地獄?無給の接客業だし?でも裁きではないんだもんね。選ぶことは不向きでも選ばせることは向いてたのかな?
観ながらすっごい「接客業」だなって感じた。相手に興味を持ちながら丁寧なヒアリングを進めて、本当に求めているのは何かを見定めて。大事ですよね。
完全再現を重視より思い出させることが大事って分かってても絶対に難しい。ついつい相手の言葉をそのまま飲み込んで打ち返そうとしちゃいそう。相手の希望って鏡に写したように跳ね返しても相手の望み通りになるとは限らないですよね。
あの若さで実際には70代な2番さん。身体は若く心だけで年齢を重ねていくとあんなにもスマートな人間になるのかって思ったけれど、感情的になった途端にあの豹変ぶり。年齢や経験の積み重ねではカバーできない苦しみってあるんだろうな。
全体的に丁寧に丁寧に作り上げられたんだなって感じる舞台でした。
うえぴがずっと嘆いてたのも分かる。最初は探り探りで掴めなくて、一つ一つを全員で構築していったんだろうなって感じられる世界でした。
久しぶりの河原さん演出作品を観られたことも嬉しかった。節々で「あ、この感じ」ってなる。
これは何回も観るのを勧めたくなる。
私は1回しか観られないから咀嚼して反芻するしかないんだけれど、物凄く理解を深めたくなるというか考え込みたくなるし、1つ答えが出たと思えば反論する自分もいて。観劇後には色んなところに思考が枝分かれしていくのが止まらなくなる、そんな作品でした。
本当はキャラクターの一人一人に焦点を当てた感想も書きたいところだけど、本当に止まらないからやめとく。
私が一つ思い出を選ぶならば全然決められないけれど、家族全員が楽しい時間を過ごしているときを選ぶだろうなって思います。